近年、「シェアリングエコノミー」と呼ばれる個人で始められるさまざまなビジネスが増え、それに伴い給与以外の収入を得ている人も多くなっています。この記事では、フリマアプリによる個人間の売買など、シェアリングエコノミーのような新しい取引に関する所得税法上の留意点などを解説します。

1 意外に忘れやすい従業員の所得税確定申告

勤務先が1カ所で、かつ、給与所得・退職所得(以下「給与所得等」)以外の所得がない従業員は、基本的には所得税の確定申告をする必要はありません。なぜなら、年末調整によって所得税の精算ができるからです。しかし、副業などによって、その年の給与所得等以外の所得の金額が20万円を超えると、翌年の3月15日(2019年分の確定申告については、新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響を受け、2020年4月16日に延長)までに所得税の確定申告をしなければなりません。

今まで年末調整のみで確定申告と無縁だった人が、新たに給与所得等以外の所得を得たことにより、申告義務が発生したことに気付かず、確定申告書の提出が遅れたり、未提出のままとなってしまったりするケースが少なくありません。

2 シェアリングエコノミーに関する取引と所得税法上の取り扱い

いわゆるフリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買、民泊、仮想通貨、カーシェアリングなどの取引が広がっています。もし、これらの取引で得た年間所得が20万円を超えると、原則、所得税の確定申告をしなければなりません。

ここでは、これらの取引に関する所得税法上の取り扱いを紹介します。なお、取り扱いが明確でない取引もあるため、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

1)フリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買

フリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買により生じた所得は、基本的には譲渡所得(詳細は後述)に該当します。しかし、自分の生活内で利用していた家具や着なくなった衣服など(以下「生活用動産」)の売買により生じた所得については、所得税は課税されません。ただし、生活用動産であっても、1単位当たりの金額が30万円を超える貴金属や美術品の売買により生じた所得は課税されます。一方、当初から転売を目的として購入した資産の売買により生じた所得については、所得税が課税されるものと考えられます。

2)民泊による不動産の貸し付け

不動産を民泊によって貸し出したことにより生じた所得は、原則として所得税が課税されます。国税庁においては、個人が空き部屋などを有料で旅行者に宿泊させるいわゆる「民泊」は、一般的に、利用者の安全管理や衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供などを伴うもので、単なる不動産賃貸とは異なり、その所得は、不動産所得(詳細は後述)ではなく、雑所得(詳細は後述)に該当する旨、注意喚起しているので留意しましょう。

3)カーシェアリングによる自家用車の貸し付け

カーシェアリングアプリやウェブサイトなどを介して、自家用車を貸し出したことにより生じた所得は、基本的には雑所得に該当すると考えられます。

4)家事・育児代行や技術の提供などリソースの提供

プライベートレッスンや、家事・育児代行などリソース(人手など)の提供によって生じた所得は、基本的には雑所得に該当すると考えられます。

5)仮想通貨の売買

ビットコインをはじめとする仮想通貨の売買や使用によって生じた所得は、原則として雑所得に該当します。

ただし、仮想通貨を売却せずに保有している場合における含み益に関しては、課税されません。


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3 確定申告を忘れてしまった場合

確定申告をしなければならない人が確定申告をすることを忘れてしまった場合には、期限後申告という形で申告をすることができます。

期限後申告をした場合には、原則として、納税額の15%相当額の無申告加算税が課されます。また、納期限の翌日から納付する日までの間において、納税額の年8.9%(納期限の翌日から2カ月を経過する日までの期間については、年2.6%)により計算される延滞税が課されます。このため、確定申告の対象とされる副業などによる所得がある場合において、確定申告期限までに確定申告をせず、期限後申告をしたときは、別途、ペナルティーが課される点に留意する必要があります。

もし、確定申告の提出を忘れていたことに気付いたときは、なるべく早く申告書を提出するようにしましょう。

4 (参考)給与所得以外に生じる主な所得

所得税には、給与所得等以外に事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得・雑所得・譲渡所得・一時所得・山林所得の計10種類の所得があります。

ここでは、副業などにより、給与所得等以外に生じる主な所得として、「譲渡所得」「不動産所得」「雑所得」の内容を紹介します。

1)譲渡所得

譲渡所得とは、資産の譲渡により生じる所得をいいます。
譲渡所得に係る所得税の計算方法は、譲渡した資産の種類により異なります。不動産・有価証券以外の資産に係る譲渡所得は、他の所得と総合して所得税を計算します(以下「総合課税」)。

一方、不動産・有価証券の譲渡による譲渡所得は、他の所得と分離して所得税を計算します(分離課税)。不動産・有価証券の譲渡による譲渡所得に対する税率は、原則として15%(復興特別所得税0.315%および住民税5%を合計すると、計20.315%)です。
譲渡所得の計算方法は、次の通りです。

譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

総合課税の場合は、上記により計算した金額から特別控除額(限度額:50万円)が控除されます。このため、総合課税の対象となる譲渡による利益が50万円以下の場合には、譲渡所得は生じないことになります。

2)不動産所得

不動産所得とは、不動産の貸し付けにより生じる所得をいいます。
不動産所得は、総合課税により所得税を計算します。不動産所得の計算方法は、次の通りです。

不動産収入-必要経費

不動産所得については、事前に、青色申告の承認申請書を提出することにより、青色申告特別控除(最高65万円)などの特典を受けることができます。

3)雑所得

雑所得とは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれにも該当しないその他の所得をいいます。雑所得は、総合課税により所得税を計算します。

雑所得の計算方法(公的年金等以外)は、次の通りです。

収入金額-必要経費

毎年確定申告を行う必要がある個人事業主等に比べ、給与所得者は確定申告をすることを忘れることも珍しくないと思われることから、注意が必要です。

また、年末調整の対象外である医療費控除などの適用を受けるために確定申告を行う場合には、副業などによる所得の金額が20万円以下であっても、確定申告の所得計算にその金額を含める必要があります。

以上

(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年3月30日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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