こんにちは、弁護士の皆元大毅と申します。
今回は、「債権回収」をテーマとするりそなCollaborateの連載第2回になります。
第1回の「売掛金を回収する基本的な方法(債権回収)」では債権回収の方法について解説しましたが、そもそも相手方が「どこに、どのような財産を持っているのか」を把握していなければ、債権回収を実現することは難しいでしょう。
そこで、第2回は、企業が相手方の財産を調査する方法について解説していきたいと思います。特に、創業間もない経営者にとって、相手方から売掛金を回収することは会社の存続に関わる重大なことですので、少しでもご参考にしていただければ幸いです。

1 財産開示制度について

財産回収の実効性を高めるための方策として、民事執行法という法律の中に、裁判所の手続を通じて債務者の財産を明らかにする財産開示手続という制度が存在します。これは、債務者が裁判所に出頭し、債務者の財産状況を陳述することにより、債務者に自ら財産の所在を開示させる制度です。
 判決等の債務名義(第1回で詳細を解説しています)があるものの、相手方にどのような財産があるか分からないとき、企業がこの手続を利用することが考えられ、そこで得た情報をもとに債権回収のために強制執行手続を利用することになります。

    深掘りキーワード

    • 財産開示制度

    企業等(債権者)が相手方(債務者)の財産に関する情報を取得するため、相手方(債務者)が裁判所から呼出しを受けて、裁判所で自らの財産状況を陳述する手続を言います。

他方、財産開示制度は、債務者の不出頭や虚偽陳述に対して過料という行政罰しか存在しません。つまり懲役刑や罰金刑がなく、実際には相手方から財産状況を正確に聞き出せないケースがあり、そこまで使い勝手がよくないという指摘もされていました。
また、専門家からもこの制度の在り方を見直す必要があるとの指摘がなされ、このような経緯を踏まえて従前の財産開示制度は全般的な見直しを図られることになりました。その結果、2020年4月に民事執行法が改正され、これに伴い財産開示制度が改正されるとともに、官公庁や金融機関等からの情報取得手続が新設されることになりました。まずは、2020年4月1日から新しくなった財産開示制度の概要を解説したいと思います。

2 民事執行法の改正ポイント

1)財産開示制度の見直し:利用条件の緩和

2020年4月1日の民事執行法改正により、財産開示制度がより利用しやすくなりました。具体的には、これまで公正証書を用いて財産開示制度を利用することはできませんでしたが、これらの書類でも財産開示制度を利用できるようになりました

2)財産開示制度の見直し:罰則の強化

従来の手続では、財産開示を申し立てられた債務者が、次のような場合に30万円以下の過料(行政罰)が科されていました。

  • 裁判所の呼出しを受けたにもかかわらず、期日に出頭しない場合(出頭拒否)
  • 裁判所から呼出しを受けた期日で宣誓を拒んだ場合(宣誓拒否)
  • 裁判所から呼出しを受けた期日において陳述すべき事項を陳述しない場合(陳述拒否)
  • 裁判所から呼出しを受けた期日で供述を偽った場合(虚偽陳述)

しかしながら、過料(行政罰)だけでは制裁力に欠け、また、金額自体が低いこともあり、財産開示を強制させる機能は十分とは言えないという問題点がありました。
この点を踏まえて、民事執行法の改正により債務者への罰則が強化され、前述した1.出頭拒否、2.宣誓拒否、3.陳述拒否、4.虚偽陳述の場合には、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることになり、債務者に強い制裁が科されることになりました。
実際に、民事執行法の改正後、財産開示手続を無視した債務者が書類送検された事案も実際に存在します。これにより、現在、企業は、「無視すれば諦める」と考えていた相手方企業や個人に対し、相当のプレッシャーを与えながら財産調査を進めることができるようになりました。

3)情報取得手続の新設

2020年4月に創設された第三者からの情報取得手続により、企業は支払に応じない相手方の財産に関し、それぞれ関係機関に対して次のような開示を求められるようになりました。

  • 登記所に対して、不動産に関する情報
  • 市町村や日本年金機構等に対して、給与債権に関する情報
  • 銀行等に対して、預貯金債権等についての情報

この制度を利用すれば、企業は、相手方に知られず第三者(銀行、登記所等)から債権回収に必要な情報(不動産の所在地、預貯金の有無及び残高等)を取得することができます。相手方が企業のケースでは、給与債権は通常想定されませんので、以降では、不動産の情報取得手続と預貯金債権等の情報取得手続の概要について説明します。

    深掘りキーワード

    • 第三者からの情報取得手続

    債権者(企業等)の申立てにより、裁判所が金融機関や官公庁に問い合わせをし、債務者の預貯金口座、所有不動産、勤務先に関する情報を取得できる制度を言います。

3 情報取得手続でできること

1)登記所からの不動産に関する情報取得手続

この手続は、企業の申立てにより、裁判所が登記所に対して債務者の不動産に関する情報の提供を命じる制度です。
企業が相手方の所有地を正確に把握していない場合、この手続を通じて、登記所から、相手方が所有する土地または建物を差し押さえるために必要な情報を取得することができます。これにより、企業が相手方の不動産に関する情報を取得し、その情報をもとに不動産を売却処分するための強制執行手続を進めることができるようになります。

2)預貯金債権等の情報取得手続

この手続は、企業の申立てにより、裁判所が銀行や信用金庫等に対して債務者名義の銀行口座の有無とその残高情報の提供を命じる制度です。この制度は、企業が相手方に知られることなく銀行口座の有無とその残高を調査することができる点に大きな利点があります。他方、世界中に存在する全ての銀行を対象にして網羅的な探索をすることができないことに留意が必要です。
実際に、この制度を利用する場合には、企業が一定の手数料(一行につき約5000円程度)を支払った上で、企業自身が探索したい銀行を特定する必要がありますので、探索したい銀行が多ければ多いほど手続費用がかかります。
また、外国銀行の本店または海外支店に存在する預貯金に関する情報の取得は難しいため、相手方が外資系企業の場合には、この手続を利用しても銀行口座を特定するのが困難なケースもあります。

さて、第1回と第2回では、企業が相手方から強制的に債権回収を行う際に利用する裁判手続の概要について解説してきました。第3回は、回収原資となる財産を早期に確保する保全手続について解説します。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年2月2日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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提供
皆元大毅[かいもと ひろき]
https://www.miura-partners.com/lawyers/00042/
<経歴>
2013年 慶應義塾大学法学部卒業
2015年 慶應義塾大学法科大学院修了
2016年 西村あさひ法律事務所(~2020年1月)
2020年 三浦法律事務所(~現在)

<取扱分野・案件等>
M&Aやコーポレート関連業務をはじめ、倒産・事業再生、人事労務、商事紛争など複数の企業法務分野について、幅広いリーガルサービスを取り扱っている。

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