近年、職場の上司や先輩(いわゆるオトナ世代)は、若手社員の言動を理解できないイライラ、腑に落ちないモヤモヤを抱えつつも、指導の際は「パワハラ」と感じさせないように、気遣いや遠慮が求められるようになりました。
そもそもオトナ世代が若手にストレスを感じる原因は、オトナの考えと、若手の行動とのすれ違いによるものがほとんどです。しかし、若手に対して「けしからん!」と怒ったり、「理解できない!」と嘆いたりしていたことを、冷静に分析するだけでスッキリすることもあります。

本連載は、拙著「イライラ・モヤモヤする 今どきの若手社員のトリセツ」を一部抜粋し再構成してお届けします。

  • オトナ世代が違和感をもつ若手社員の言動を具体的にピックアップ
  • ギャップやストレスの正体を分析
  • 円滑なコミュニケーションや適切な指導法を考察

という3ステップで、指導の妨げとなるストレス解消のヒントを探っていきます。

1 すぐに病みそうで、キツく怒れないんですけど……

オトナのイライラ・モヤモヤ
 ある若手にミスを指摘したら、あからさまに傷付いたみたいな表情になった。そして、その翌日から会社を休むことに。え? そんなに厳しく言ったつもりはないのに? 部下がミスを犯したなら、間違いは正すのがオトナの役目。しかし今どきの若手社員は線が細すぎて……。どう叱ればいいんだか……。

若者のホンネ
 ミスをしたのは、申し訳なかったと思ってはいます。でも、言い方ってあるじゃないですか? しかも、オフィスでみんないる前で、ガッツリ怒られるのって、公開処刑じゃないですか? せめて会議室とかで、個別に指摘してくれればよくないですか?

ちょっとキツく怒ったら、すぐに傷付く。一歩間違うと、辞めるに直結してしまう。怒られ慣れていない若手社員に腰が引けて、ついつい腫れ物に触るような感じになってしまう。しかも、何かあるとすぐパワハラのレッテルを貼られる昨今。若者の間違いを正すのは今、一触即発の難しいコミュニケーションとも言えます。

2 人前で怒らないでください

実は、冒頭の若者のホンネに、叱り方のヒントがあります。それは怒るシチュエーションがとても重要だということです。若者を公然と怒るのは厳禁なんです。怒るにしても、せめて個別の場面で。これは周囲の目を異常に気にする若手社員の切実な声です。

筆者の組織開発研究の事例をご紹介しましょう。全国に約70店舗を展開する飲食チェーンで、従業員の定着率調査をしたときのこと。
1年間、全くスタッフが辞めていなかった店舗が、2店舗だけありました。その共通点は、女性が店長だったことでした。さらに掘り下げてみると、彼女たちのお子さんが、同じ店舗でアルバイトしているということも、共通していました。

ヒアリングして分かったのですが、母親でもある2人の店長さんは、「みんなの前で自分の子どもを怒ると、職場の空気が悪くなる」ということを気にしていました。だから子どもを怒るときには、バックヤードに呼んで、個別に指導することにしたようです。

しかし自分の子どもにだけ、そういう対応をするのもマズイ。こうした配慮から、この2店では、従業員のミスを正すときには、人前でなく、個別に行うことが習慣になっていったのです。1年間離職ゼロだった理由は、これだけではないかもしれません。しかし2店の共通点はこれだけでした。公開処刑にしないこと。この事例が教えてくれる教訓です。

とはいえ、個別のシーンで怒ることにしたとしても、怒る行為自体が簡単になるわけではありません。特に1対1で行う評価面談なんかは緊張が走る瞬間です。


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3 キツく言うのもマズイけど、でも遠回しに言うと伝わらない

オトナのイライラ・モヤモヤ
あー、気が重い。明日のフィードバック面談。成果を上げたメンバーとの面談は、こっちも嬉しいし盛り上がるけれど、全く結果が出てないメンバーとの面談は気が滅入る。特に今どきの若手は打たれ弱いから、ほんと気を遣う。あんまりストレートに言いすぎるとすぐ傷付くし、だからといって遠回しにやんわり言っても、全く伝わらないし。

若者のホンネ
あー、気が重い。明日のフィードバック面談。今回、評価も低いはずだし。きっと、また一方的にダメ出しされるんだろうなぁ。アレって、ほんとヘコむ。こっちだってダメなのは分かっちゃいるんだし、ダメ出しだけじゃなくて、どうすればいいかアドバイスしてくれてもいいのに……。

成果を上げたメンバーに評価を伝えるのは、比較的簡単ですし、伝えるほうも嬉しいものです。問題は、評価が低いメンバーにフィードバックをする場合です。
まさに、紹介したイライラ・モヤモヤ場面のように、「直接的に言うと傷付いちゃうよなぁ。でも遠回しに言っても伝わらないしなぁ」といった悩ましい経験をした方が、相当いらっしゃるのではないでしょうか。筆者も、そのひとりです。

4 するほうもされるほうも嫌いなフィードバック

一方で、フィードバックをされる側も、相当なストレスを抱えています。評価面談だけでなく、フィードバック全般に対するイメージを聞いてみたところ、ある若手社員は、「フィードバックと聞けば、ダメ出しのことじゃないですか?」と、苦笑交じりに語ってくれました。
他にも「言葉を換えれば、『詰め会』ですよね」とか、「傷口に塩を塗り込む面談」とか、自虐的なコメントが続々と出てきます。いやはや、評判がよろしくありません。

そして、これは若手社員に限った話ではありません。日々の職場でフィードバックをすることが多いオトナ世代も、当然、その上役からフィードバックを受けることはあります。(そして、筆者の経験による主観ではありますが)実は、上の階層になればなるほど、フィードバックが雑になる気がします。
自分が言われて嫌なことを、若手に言うのもどうかと思う。しかし、こっちだって上から手厳しく言われることに耐えている。なんで若手にだけ気を遣わないといけないんだ。こんなイライラ・モヤモヤを感じるオトナもいるでしょう。

しかしながら、やはりフィードバックは、今どきの若手社員が望む「成長」を促すためにも、欠かせないコミュニケーションです。
逆に言うと、フィードバックスキルを磨くことができれは、若手社員を正しい道に導くことにつながります。これは、我々オトナにとっても、仕事がやりやすくなるわけですから、当然ウエルカムですよね。

5 怒りの衝動は6秒しか続かない

まず重要なのは、感情的にならないこと。具体的に気を付けるべきなのは、「言い方」です。ネガティブなことを伝える過程で、相手の反応によっては怒りが湧いてくる。そんなシーンは少なくありませんよね。これを、どうコントロールできるのかです。
そもそも、人間が爆発的な怒りを感じ、その衝動的な感情が持続するのは、どのくらいだと思いますか。なんと、たったの6秒ほどだそうです。だから、怒りを感じたら、まずは6秒間やりすごす。この6秒ルールで、怒りの衝動は相当収まってきます。

ちなみに、6秒ルールについて、少し補足しておきます。実は6秒って意外と長く感じるものなんです。だからこそ、やりすごすために、ちょっとしたワザを用いることをおススメします。
例えば、自分の怒りに「点数」をつけてみる。あるいはイラッときた瞬間に唱える「和みの言葉」を決めておく(飼っているペットの名前など、おススメです)。6秒間やりすごせるルーティンを、ひとつ持っておけばいいのです。

6 I(アイ)メッセージで伝えるのがポイント

さあ、冷静になってきたところで、ネガティブなことを伝えるコツに関して、ちょっとしたポイントをお伝えしておきましょう。

それは、YouメッセージではなくIメッセージで語ること。「私」を主語にした表現を「I(アイ)メッセージ」、相手を主語にした表現を「You(ユー)メッセージ」といいます。「Youメッセージ」には,「あなたはこうあるべきだ」という断定的な響きと,相手を責めるニュアンスが感じられます。
それよりは、「私にはこう見えた」「私はこう感じた」というIメッセージで伝えるほうが効き目があります。責めるニュアンスがかなり軽減されますから。

「アポイント件数が1日10件に達していないなんて、ありえないでしょ」ではなく、「アポイント件数が1日10件に達していないことを、私は残念に思う」のほうが、言われるほうにとっても、飲み込みやすいでしょう。

感情にまかせて怒鳴り散らすのではなく、冷静にこうしてほしいとリクエストする。そこはできるだけ客観的に語り、最後に自分の気持ちを(期待をベースに)添える。これが「叱る」です。まさに正しいフィードバックの在り方と同義。ぜひ、実践してみてください。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年12月5日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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提供
平賀充記(ひらが あつのり)
株式会社ツナググループ・ホールディングス エグゼクティブフェロー 兼 ツナグ働き方研究所所長。1988年(株)リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」「タウンワーク」「はたらいく」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長。2012年(株)リクルートジョブズ・メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立、所長に就任、いまに至る。
著書に『非正規って言うな!』(クロスメディアマーケティング)、『神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)がある。

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