「働き方改革」や新型コロナウイルスの影響により、「在宅勤務」の導入が急務となっている今、バックオフィス業務の在り方そのものが事業継続のカギを握っています。

なぜならバックオフィス業務が企業の「心臓」とも言える基幹部分だからです。

エンジニアやデザイナーといったクリエイター部署は比較的「在宅勤務」への移行がスムーズに進む一方で、従業員の給与計算や会社のお金を扱う人事・経理といった部署は、部分的に移行ができたとしても、完全な在宅勤務はできないといった声を多く聞きます。

中でも経理は企業の基幹部分とも言える部署なだけに、その在り方についてはテコ入れし難い「要塞」と化している企業も少なくないのではないでしょうか。

ではなぜ経理部門はこうも要塞化してしまうのでしょうか?
この記事では、これまで100社以上の経理業務をオンライン化してきた中で見えた「要塞化された経理部」を「オンライン経理部」へ変えるために、企業が手放すべき3つのポイントについてお伝えします。

1 人の手による作業を捨てる

実は企業の経理部は、定期的に業務改善や変更を取り入れています。
 その一つが「システム変更」というものです。事業の展開スピードに合わせて、使いづらくなった会計システムを最新のシステムに変更します。

しかし、変わるのはシステムだけであって、担当者の負担や業務にかかる時間はさほど効率化できていないのが実情です。

より機能的なシステムを入れたのに、なぜ効率化が進まないのでしょうか。理由は簡単で、単に道具を変えただけで、その使い方そのものを変えないからです。

「業務フロー」は、システムが変わるたびに見直すべきですが、これをやらない企業が多く見受けられます。そもそもそれって本当に必要なフローでしょうか? と問いかけてみてください。

例えば「入力」作業。同じような内容の入力を、複数のシステムやツールへ入力している経理担当者の話を何度か聞いたことがあります。「なぜそうしているのか」を聞いたところ、入力した内容の整合性を図るため客観的にチェックする必要があるとのこと。さらに「なぜその必要があるのか」を聞いたところ、次のような答えが返ってきました。

  • 人間がやることだからどこかにミスが潜んでいるはず
  • ミスを無くすために別の角度からチェックが必要
  • 前任者から業務を引き継いだときからこのやり方だった

システムを変えるとき、真っ先に見直すべきはこのような「人の手」による業務フローではないでしょうか。

今やあらゆるシステムにはAIの学習機能が備わっています。一度の入力で、複数のレポートへ反映させることも簡単です。「人の手」によるミスを無くしたいのであれば、いかに「人の手」を加えないで済むフローを作るかが、システム移行を成功へと導くカギになるのです。

2 デスクを捨てる

「自分のデスクに行かなければ仕事ができない」。この状況が属人化という壁を強固なものにしているのは事実です。そもそも「自分のデスク」には何(どのような情報)が集まってくるのでしょうか?

クラウドシステムの導入に併せ、「自分のデスク」には何が集まるのかを整理して、デスクに行かなくても必要な情報が集まる仕組みを作りましょう。

ここで忘れてはいけないのが「自分が誰かのデスクに届けているもの」の存在です。「自分のデスク」は必要なくなったけど、「別の誰かのデスク」に集まるようになってしまうのでは本末転倒です。大切なのは「デスク」に依存しない仕組みを作ることです。

例えば、経理のメイン業務である債権・債務の管理で考えてみましょう。

債務管理では、支払請求書はメールやWebで受け取り、インターネットバンキングで支払うようにすることで、インターネット環境さえあれば「誰でも」「いつでも」「どこにいても」、債務管理に関する全ての工程が可能になります。

債権管理でも同様に、クラウドシステムを使って請求書を発行し、インターネットバンキングを通して入金を確認する仕組みに変えるだけで、自分のデスクではなくても債権・債務の業務が完結します。

「みんながバラバラの場所で仕事をしていたら、不正防止やセキュリティはどうなるの?」という心配の声もよく耳にします。確かに「人の目」による抑止力はそれなりの効力を持っていますので、管理する側の人にとっては心配になって当然ですね。

しかし、多くのクラウドシステムには「権限管理機能」がついているので、業務に携わる人の職責に応じて、利用できる機能を絞ることができます。

また、インターネットバンキングも、振込先口座登録ができる権限、振込登録ができる権限、承認できる権限を分けることができます。

この「権限管理機能」が、これまでの「人の目」の代役を担ってくれます。「権限管理機能」をしっかり整備して使うことで、内部統制やセキュリティ対策にも耐えられる仕組みが構築できるのです。

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3 小口現金を捨てる

自分のデスクを無くしても「金庫」の管理が残ってしまうと、完全なオンライン化は不可能です。そもそも何を現金で支払っているでしょうか?

従業員の経費精算の他に、光熱費、通信費といった払込伝票による支払いを現金で支払っている、といった企業が多いのではないでしょうか。今や経費精算はクラウドツールを使っている企業が増えてきましたが、最後の「支払い」を現金で精算しているといった企業が少なくないのです。

なぜそのようにしているかというと、営業職のようにほぼ毎日のように支出がかさむ従業員への負担軽減のため、都度精算してあげたいというのが一番の理由のようです。

このような場合、小口現金からの精算を無くす方法は2つあります。

1つはクレジットカードの支給です。
法人契約のクレジットカードには、従業員ごとにクレジットカードを発行することができるサービスがあります。経費精算が多い従業員へは会社からクレジットカードを支給することで、経費精算というフローそのものを無くすことができ、従業員のお財布事情にも優しい仕組みとなります。

また、光熱費やその他払込票で支払うタイプの支出は、全てクレジットカード決済に変えることで、現金の支払いを無くすことができます。

もう1つは、振り込みによる経費精算です。
経費精算が多い従業員へは給料振込とは別に週次で精算するなど、精算のタイミングを増やしてあげることで自己負担を軽減することができます。

更にクラウド経費精算ツールを使って経費精算することで、たとえ振込手数料がかかったとしても、小口現金を管理するよりもはるかにメリットがあります。

なぜなら、一度の利用・入力でその後の転記作業が無くなるからです。転記作業が無くなるということは、そこに必要だったチェック作業も無くなるので、これまで転記とチェック作業に要していた作業時間が、まるっと効率化されます。

クラウド経費精算ツールもクレジットカードを利用した場合と同様に、従業員が入力した内容をそのまま会計ソフトに取り込み、費用計上し、更には振込データまで作ることができます。

小口現金を無くすということは、その管理に要していたリソースとリスクの両方を改善することができるということになります。

4 まとめ

今回お伝えした3つの「手放すべきポイント」さえ押さえることができれば、場所や人に依存しない「オンライン経理部」は簡単に構築できます。

実はこの3つのポイント、何も目新しいものではありません。
更に言うなら、企業の担当者も十分に「手放した方がいい」のを分かっているのです。
分かっているのに手放せないのには「セキュリティの強化」「属人化の払拭」「内部統制強化」という壁があるからではないでしょうか。

人の手を離れ、業務を完全にシステムへ寄せることで、セキュリティが保たれるのか。
これまで属人化により成り立っていた業務を、AI技術と協働することで業務は維持されるのか。
完全に業務をオンライン化できても、内部統制は適正に維持できるか。

私の経験から言うと、どれもできます。
まずは、今世の中に公開されているクラウドシステムを知るところからはじめてみてください。その一歩が「オンライン経理部」のプロローグとなるでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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提供
執筆:株式会社キャスター CASTER BIZ accounting/HR事業部 マネージャー 宮川美穂
事業会社や会計事務所で経理・労務の経験を20数年間培い、「この経験を企業の経営基盤強化に役立てられないか」と考えてキャスターに入社。オンラインで経理業務・人事労務業務をサポートするサービスを構築・展開し、日々クライアントを支援している。

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