ペットランドリー(ペットケアランドリーとも)とは、ペット用品(ペットの洋服やタオルなど)を洗濯できるコインランドリーのことです。
コインランドリーは、主に単身世帯や「共働きで帰りが遅く、洗濯の時間が取れない」「家事の時短を図りたい」ファミリー層や共働きの世帯が多く利用しますが、一般的なコインランドリーではペット用品を洗うことが禁止されています。そのため、単身世帯などでペットを飼っている人たちは、「ペット用品を洗濯できるコインランドリーを利用したい」と考えています。
そのニーズに応えるのがペットランドリーです。近年は、ペット関連市場が拡大傾向にあることに加え、ペットの通院、手術、葬儀、ホテルなど多様なサービスも展開されており、ペットと暮らす上で便利な関連サービスの需要が増えています。
この記事では、ペットランドリー事業の展望を見据えるに当たって、市場動向、必要な設備と収支モデル、開業の留意点・ポイントを紹介します。

1 市場動向

1)ペット関連市場は拡大傾向

ペット・ペット用品の販売額は、2018年(2507億8900万円)から2022年(2789億9200万円)にかけて11.2%増加しています(経済産業省「商業動態統計」)。

ペット・ペット用品販売額の推移の画像です

家計におけるペット用品への支出(2人以上の世帯)も、2018年(4697円)から2022年(6362円)にかけて35.4%増加しています(総務省「家計調査」)。

ペット・ペット用品への支出推移の画像です

経済産業省「ペット産業の動向-コロナ禍でも堅調なペット関連産業-」によると、コロナ禍においても市場が拡大した理由として、

  • テレワークにより在宅時間が増えたことでペットと接する時間が増えた
  • 生活や仕事の環境が激しく変化する中で、癒しを求めペットを飼い始める人が増えた

などが考えられます。

2)ペットランドリーの見込み顧客率

次に、ペット用品専用コインランドリー(以下「ペットランドリー」)の見込み顧客率を見てみます。日本情報マートが全国15歳以上の男女2204人に対して行ったインターネットアンケートの結果、専用の衣類やタオル、ベッド、マットなどが必要になる犬、ネコ、うさぎのいずれかを飼っているという回答は28.1%(有効回答2556件(複数回答)のうち717件)となりました。
全世帯のうち28.1%が犬、ネコ、うさぎを飼っていると仮定します。

家でどんなペットを飼っていますか?の画像です

さらに犬、ネコ、うさぎを飼っていると回答した人に対し、ペットランドリーの利用について尋ねたところ、「利用したい」が53.9%、「すでに利用している」が4.5%となりました(有効回答514件)。つまり、

利用したい人に対して、ペットランドリーの数が足りない、またはペットランドリーを認知している人が少ない可能性

があります。

アンケートの画像です

以上の結果をふまえて見込み顧客率を考えると、

ペット(犬・ネコ・うさぎ)飼育率28.1%×ペットランドリー需要率(53.9%+4.5%)=16.4%

となります。あくまで概算ですが、全世帯のうち16.4%、6世帯中1世帯を見込み顧客率として仮定することができます。

3)ペットランドリーの利用頻度

ペットランドリーを「利用したい」「すでに利用している」と回答した人に対し、希望する利用頻度(すでに利用している人は実際の利用頻度)を尋ねたところ、「週に1回程度」が27.0%で最も多く、次いで「2週に1回程度」20.3%、「月に1回程度」18.3%、「週に2回以上」17.3%となりました(有効回答300件)。
82.9%の人が、少なくとも月に1回以上利用したいと考えているようです。

利用頻度の画像です

2 必要な設備と収支モデル

1)必要な設備

ペットランドリーの開業に当たっては、ペットの毛や固形物(皮脂汚れなどの固まり)をスムーズに排水し、抜け毛や毛詰まりをキャッチするペット用品専用の洗濯機や乾燥機を設置するのが一般的です。
ランドリー機器大手のエレクトロラックスでは、ペット用品専用洗濯機(1回の処理量が5.5キログラムの小型タイプ、11キログラムの大型タイプ)や、ペット用品専用乾燥機(1回の処理量が6キログラムの小型タイプ、16キログラムの大型タイプ)を販売しています。なお、設置費用は機器によって異なります。
また、ペットが舐めても安全な無添加仕様のペット用品専用洗剤や、ペットが舐めても安全なダニよけ成分を配合したペット用品専用抗菌・防虫加工剤が必要になります。

2)収支モデル

設置台数や集客数によって収支は大幅に変わりますが、コインランドリーの企画などを行っているウイングル(福岡県福岡市)のウェブサイトでは、次の通り、ペットランドリーの収支モデルを紹介しています(金額は税込み)。なお、「1.ペットランドリー機器」の内容は、同社へのヒアリングに基づき記載しています。

1.ペットランドリー機器

  • エレクトロラックス製の専用洗濯機(小型タイプ)2台
  • 専用乾燥機(小型タイプ)2台

2.コスト(一次工事、給排水、電気に係る費用を除く)

  • 導入コスト:総額550万円、1カ月当たり6万9255円(7年リース、金利1.6%)
  • ランニングコスト:1カ月当たりの売上の30%

3.客単価(なお、ペットランドリー機器は24時間稼働とする)

  • 洗濯1回500円+乾燥1回300円(100円20分)=800円

1日当たり7人の集客を想定する場合、1カ月当たりの売上・コスト・利益は次の通りです。

  • 1カ月当たりの売上:800円×7人×30日=16万8000円
  • 1カ月当たりのコスト:6万9255円+5万400円(16万8000円×30%)=11万9655円
  • 1カ月当たりの利益:16万8000円-11万9655円=4万8345円

また、1日当たり12人の集客を想定する場合は次の通りです。

  • 1カ月当たりの売上:800円×12人×30日=28万8000円
  • 1カ月当たりのコスト:6万9255円+8万6400円(28万8000円×30%)=15万5655円
  • 1カ月当たりの利益:28万8000円-15万5655円=13万2345円

なお、ランドリー機器の仕様などについては、ウイングルのウェブサイトをご確認ください。

■ウイングル■
https://www.wingle-coinlaundry-mine.com/

3 開業の留意点・ポイント

1)ニオイや汚れ対策

開業するに当たって重要なのが、ペット用品を洗う際に発生するニオイ対策です。屋内ではニオイがこもりやすく、

  • 大型の換気扇を設置する
  • 洗濯機・乾燥機を屋外に設置する

などの配慮が必要です。特に、一般的なコインランドリーの中にペット専用機器を備え付ける店舗の場合、ニオイの問題から他の利用客からクレームが出る恐れがあります。
また、ペットランドリーでは、ペット専用のシャワーやバスタブ、スタンドドライヤーなどが用意されたセルフトリミング設備を設置するケースがあります。利用客にとっては便利ですが、毛が散らばるなどして汚れることがあるため、無人のペットランドリーなどは注意が必要です。こちらも他の利用客からのクレームにつながる可能性を考えると、セルフトリミング設備を設置する際、数時間おきに見回るなどこまめな有人管理が必要になりそうです。

2)付近のペット関連施設との協力

ペットランドリーも通常のコインランドリーと同様、「郊外であれば主要な幹線道路沿いで駐車場がある場所がよい」「半径500メートル以内の世帯数が多い都市部であれば、駐車場がなくても郊外より集客性が高い」といった特徴があるようです。
一方、通常のコインランドリーとの大きな違いは、

近所のトリマーや獣医、ペットホテルなどのペット関連施設と連携することができる

という点です。例えば、次のような取り組みが挙げられます。

  • 近所のトリマーなどにペットランドリーのチラシを置いてもらう
  • 粗品を渡して、利用客にペットランドリーをおすすめしてもらう
  • 100円玉を大量にトリマーに持っていき、初回のペットランドリー利用客には100円玉を渡してもらう

ペットランドリーは認知度が低いため、オープン前後の広告宣伝が重要になります。そのため、上記のようなことができれば、広告宣伝費を抑えつつ、見込み顧客へピンポイントに周知することが可能です。実際、こうした効果を見込んで、トリマーの隣や階下、トリマーの施設内にペットランドリーが併設されるケースがあります。

3)空中店舗の揺れ・騒音(ビルの2階以上に出店する場合)

コインランドリーは路面店が一般的ですが、ビルの2階以上に出店する空中店舗の場合、最も留意すべき点は、建屋の揺れ・騒音の問題です。ペット専用洗濯機の脱水の力は大きく、木造建築などの場合は建屋が揺れる可能性があります。
実際、全国的にも空中店舗のペットランドリー、もしくはコインランドリーの事例はほとんどないようです。前述したウイングルによると、1件だけ空中店舗型のコインランドリーを取り扱ったことがあるものの、最初から2階に設置することを想定した鉄筋コンクリート造の建物だったそうです。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年6月30日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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