近年、職場の上司や先輩(いわゆるオトナ世代)は、若手社員の言動を理解できないイライラ、腑に落ちないモヤモヤを抱えつつも、指導の際は「パワハラ」と感じさせないように、気遣いや遠慮が求められるようになりました。
そもそもオトナ世代が若手にストレスを感じる原因は、オトナの考えと、若手の行動とのすれ違いによるものがほとんどです。しかし、若手に対して「けしからん!」と怒ったり、「理解できない!」と嘆いたりしていたことを、冷静に分析するだけでスッキリすることもあります。

本連載は、拙著「イライラ・モヤモヤする 今どきの若手社員のトリセツ」を一部抜粋し再構成してお届けします。

  • オトナ世代が違和感をもつ若手社員の言動を具体的にピックアップ
  • ギャップやストレスの正体を分析
  • 円滑なコミュニケーションや適切な指導法を考察

という3ステップで、指導の妨げとなるストレス解消のヒントを探っていきます。

1 飲みニケーションはもはや要らない?

オトナのイライラ・モヤモヤ
今どきの若者は飲み会嫌いっていうし、ほんと誘いづらい。仕事の相談にだって乗るし、仕事抜きの話だっていいし。交流を図ることで、円滑に仕事が進んでいくことにつながるわけだし。そもそも、昔は上司から「おい今晩行くぞ!」って言われて、無理やり連れて行かれてたもんだ。なんでこんな気を遣わなきゃいけないんだろ。

若者のホンネ
いや、別に全部の飲み会が嫌なわけじゃないです。こっちだって教えてもらいたいこともあるし、相談にも乗ってほしい。でも飲みに行ったら行ったで、だいたい説教じゃないですか。それか自慢話聞かされて、こっちは相槌を打ってるだけ。あと絶対、2軒目行こうってなるし。そうなっちゃうと時間の無駄でしかないっす。

確かに、若者が飲みニケーションを不要だとする風潮は高まっています。さかのぼること4年前の2019年12月、「#忘年会スルー」というハッシュタグがツイッター上に飛び交うなど、コロナ禍の前から、実際に職場の飲み会に参加しないことを公言する若者がちらほらと現れるようになっていました。

2 職場の飲み会に行きたい若者たち

しかし、昨年末に発表されたある調査結果からは、飲みニケーションに関する別の実態が浮かび上がってきました。“飲みニケーションが不要だという声が初めて過半数を超えた”という結果が話題になったのです。
データは、若者だけでなくオトナ世代も飲みニケーションにネガティブであるという事実を示していました。コロナ禍で会食を自粛する生活が長期間続いたことで、アルコールを介したコミュニケーションは激減しました。職場の飲み会を、ある意味で必要悪として受け入れてきたオトナ世代も、なきゃないでいいと気づいたんですね。

一方で、このデータは“飲みニケーションにポジティブな若者世代が4割存在する”ということも語っています。

「うちの会社は、マンツーマンで会社の人と飲みに行くのは禁止されていて。なんかそのルールのせいか、上の人たちが全然誘ってくれないんです。こっちとしては、仕事中だと、時間とって申し訳ないなぁと思って聞きにくいこともあるので、飲み会でいろいろ教えてほしいんですけど」。こう語る若者もいます。院卒で入社した彼は「理系の研究室はめちゃくちゃ上下関係の厳しいパワハラ環境でしたから、少々のことは大丈夫だと思ってるんですが、上司のほうがパワハラに腰が引けてる感じで」と残念そうに続けました。

「仕事に関する情報収集をしたい」「これからのキャリアの参考にしたい」など、飲み会でオトナから吸収するものがあると感じている若者が一定数いるのです。ただ希望する飲み会のカタチとギャップがあるから、ネガティブに映る。これが実態なんでしょう。

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3 良かれと思って発したその言葉が……

つまり、若者にとって、実りのある時間となる飲みニケーションはウエルカム。だから、オトナ世代が遠慮しすぎる必要はありません。飲みニケーションが、「社内外を問わず親交を深める機会として有意義な場」として機能するとしたら、新人も含め職場の若手を飲みに誘っていいのです。

とはいえ、飲み会でのNGポイントがあるというのは知っておかないと、オトナ世代(特に上司)としては失格です。むりやりお酒をすすめる、お酌を強要する、といったパワハラ系のコミュニケーションや、異性の若手に対してプライベートに踏み込みすぎるセクハラ系のコミュニケーションが論外だというのは、説明するまでもないでしょう。

問題は、良かれと思って発した言葉が逆に仇となってしまうヤツです。人生の先輩としての気遣いや真っ当なアドバイスをしたはずなのに、結果として若者のヤル気を打ち砕くことになるというのは残念すぎます。

4 イライラ・モヤモヤ解消法

オトナ世代が、健全に若手と飲む作法を学ぶこと。言ってみれば「飲みニケーション2.0」のスキルを習得すること。これが、若手との飲みにおけるイライラ・モヤモヤを解消することにもつながります。
そういった観点からも、せっかく盛り上がっていたのに、その言葉をかけた瞬間、彼らの心が離れていくだろう「ありがちなNGワード」について知っておくべきなのです。

NGワード「今日は堅苦しい仕事の話はナシ!」
いやいや、しましょうよ、仕事の話を。若手の緊張を解きほぐして素を出しやすくしてあげたいし、関係性をつくるためにも仕事の話抜きで楽しく語りあおう。こうした気遣いはものの見事に空振りしています。若者の飲みニケーションの目的を分かっていません。
若者は貴重な時間を割いて飲み会に来ているわけです。先輩から教えを乞う、仕事の分からないところを聞くのが参加の主目的。ただただ仲良くなるための会話しかないと、若者には時間の無駄でしかありません。

NGワード「オレの若い頃は、●●したものだ!」
教えを乞いたい若者たちではありますから、会社の先輩からいろいろ教えてもらえるのはありがたい。しかし度を超すのは危険です。
今の若者たちは表面的な協調性に長けているので、オトナの話が響いた風のリアクションをします。多少酔いが回ると、そういう相槌に気持ち良くなっちゃって、スイッチが入ってしまう。ついつい気が緩んで「俺が若いころはとにかくガンガンやってハチャメチャだったもんだ」などと暴走してしまいがちです。
若者へのアドバイスだったはずが、次第に武勇伝全開に……。もうそうなったら最後、若者は耳をパタンと閉じてしまいます。心はもはや幽体離脱して、その場にはいません。死んだ目で、オートマチックに相槌を打ち、オートマチックにお酌をするのみです。

NGワード「世の中そんな甘いもんじゃない」
新人が、なぜウチの会社を選んでくれたのか。この「どうなりたい?」「やりたいことは?」という問いかけは、若者との関係性を築くのにも、仕事の話につなげていくにも便利な話題です。で、新人はとりあえず面接で語った志望動機なんかを述べたりするでしょう。問題はここから。こうした新人の思いをオトナ世代は一刀両断しがちです。
往々にして会社説明会や採用面接なんかでは、自社の次世代事業戦略など魅力的なことが語られます。そうしたフレーズが刷り込まれた新人のトークは、現場を預かるオトナ世代には夢見がちで青臭く感じられます。
そこでつい発してしまうのが「世の中そんな甘いもんじゃない」という禁断のフレーズ。ストレートに若者のヤル気を打ち砕きます。今までキラキラしていた若者の目からは光が失われ、間違いなくアナタの名前は飲みに行きたくないリストに書き込まれるはず。

最後に、若手との飲みニケーションを円滑にする簡単な方法をお伝えしましょう。それは、自分にとって煙たい存在の上司や先輩と飲みに行ってみることです。その飲み会でかけられる言葉が、「あーこういうのがNGなんだ」と、必ず気づかせてくれます。反面教師が、あなたの飲みニケーションスキルを磨いてくれるでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年11月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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平賀充記(ひらが あつのり)
株式会社ツナググループ・ホールディングス エグゼクティブフェロー 兼 ツナグ働き方研究所所長。1988年(株)リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」「タウンワーク」「はたらいく」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長。2012年(株)リクルートジョブズ・メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立、所長に就任、いまに至る。
著書に『非正規って言うな!』(クロスメディアマーケティング)、『神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)がある。

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