2023年の株主総会(この記事では「定時株主総会」を指します)のシーズンになりました。

これまで3回にわたって、中小企業の株主総会に関する基本的な実務について解説してきました。今回は、経営陣と対立する株主が株主提案権の行使や動議を行ってきた事例を想定し、問題になりそうな点について、Q&A方式で解説していきます。株主総会の基本的な手続を押さえつつ、トラブルにも適切に対応できるようにすることが大切です。

皆様にとって、本記事が株主総会トラブルに対応するための一助となれば幸いです。

なお、以降で想定するのは、「非公開会社」で、取締役会・監査役設置会社(会計監査人非設置会社)です。非公開会社とは、定款上、発行する株式の全部に譲渡制限を設けている株式会社です。

1 社長が総会招集できない。誰なら招集できるのか?

●シーン1
当社は、2020年から昨年までの3年間、新型コロナウイルス感染症に配慮して、株主総会の開催を省略してきました(Q1)。今年は、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行したことも踏まえて、久しぶりに株主総会を開催することを予定しています。。

ところが、突然、株主Xから、「取締役を全員解任する」ことを株主総会の議題とするように求める書面が届きました(Q2)。株主Xは、当社の創業者であり、現在も良好な関係を築けているものと思っていましたが、どうやら会社の経営に不満があるようです。

当社のA社長は、株主Xからの突然の提案に対応するため、顧問弁護士に相談に行きましたが、その帰り道、不慮の事故に遭い、入院を余儀なくされました。

そこで、当社の取締役B副社長が、A社長に代わって取締役会を開催し、株主総会の招集を決定しました(Q3)。しかしながら、招集手続に不慣れであったため、6月14日までに招集通知を送付しなければならないところを、誤って6月16日に発送してしまいました(Q4)。

Q1.

株主総会の開催を省略する場合、どのような手続をしたらよいでしょうか。

A1.

会社は、一定の条件を満たす場合には、株主総会の開催自体を省略することができます。

具体的には、議決権を行使することができる株主全員が、株主総会の議題について書面または電磁的方法で同意した場合、株主総会の決議がなされたものとみなされます。そして、株主総会の目的である議題全てについて、書面または電磁的方法により可決された場合、当該株主総会は終結したものとみなされます。このような株主総会の決議は、一般的に、「書面決議」と呼ばれています。

書面決議の場合でも、忘れずに株主総会の議事録を作成しましょう。

Q2.

株主から届いた株主総会の議題として、「取締役を全員解任する」ことを求める書面に対して、どのような手続をする必要があるのでしょうか。

A2.

会社は、株主からの提案を議題に加えたり、議題の中身である議案について「議案の要領」を招集通知に記載したりしなければなりません。

株主は、一定の事項を株主総会で審議することを請求できます。このような権利を「株主提案権」と呼びます。

非公開会社では、総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を有する株主は、株主総会の日の8週間前までに、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求できます。

従って、適法になされた株主提案を無視することはできず、上記のような対応が必要です。

Q3.

当社の代表取締役が入院しており、株主総会の招集を行うことができません。新たに代表取締役を選定しないと、株主総会の招集ができないのでしょうか。

A3.

新たに代表取締役を選定しなくても、あらかじめ定められた他の取締役が、取締役会決議に基づき株主総会を招集することができます。

株主総会は、取締役会において株主総会の招集が決定された後、招集権者が株主に招集通知を発送します。法令では、「株主総会は、取締役が招集する」とされており、代表取締役による招集が必須なわけではありません。

一般的に、定款において「代表取締役」や「社長」が招集権者と定められていることが多いと思います。しかしながら、これらの者に事故などが起きた場合には、定款や取締役会であらかじめ定められた順序により、他の取締役が招集権者となります。

Q4.

株主総会の招集通知を送付する期限を過ぎてしまった場合、招集手続に法令違反があったものとして、株主総会の決議が取り消されてしまうのでしょうか。

A4.

こうした場合の対策として、株主から招集通知期間を短縮する旨の同意を取得し、再度招集通知を送付することが考えられます。

非公開会社では、書面や電磁的方法による議決権行使を認める場合を除き、株主総会の1週間前までに(中7日)、株主に対して招集通知を発送しなければなりません。しかしながら、招集通知を送付する期限を過ぎてしまったとしても、議決権を行使することができる株主全員の合意がある場合には、招集通知期間を短縮することが可能です。

また、招集通知期間が不足する場合でも、株主全員が開催に同意して出席した場合には、株主総会の決議が有効とされる場合があります。

2 株主から「議長交代」を求められた!

●シーン2
株主総会の招集通知の期限は過ぎてしまいましたが、無事、株主全員に対して招集通知が到達し、全員が株主総会に出席しました。

しかしながら、当社のA社長の怪我は回復せず、株主総会に出席することができません。そのため、やむを得ず、B副社長が、A社長に代わって株主総会の議長を務め、株主総会を開催しようとしました(Q5)。

ところが、株主Xが、突如として、「B副社長は株主総会の議長として不適切である。議長を交代されたい」と提案しました(Q6)。その後も、株主Xが、「取締役報酬を減額する」ことを提案するなどしたため(Q6)、B副社長は予想外の株主Xの行動に困惑させられました。

Q5.

代表取締役A社長が入院しているため、株主総会に出席できません。議長はどうしたらよいでしょうか。

A5.

今回の場合、B副社長が議長となることが考えられます。

株主総会の議長の資格について、法令上の定めはありませんが、一般的には定款において、「代表取締役」や「社長」が議長と定められていることが多いです。

「代表取締役」または「社長」に事故などが起きた場合、定款や取締役会であらかじめ定められた順序により、他の取締役が議長となります。一般的には、「副社長」が代わりの議長とされていることが多いと思います。

Q6.

株主Xからの「議長交代」や「取締役報酬の減額」に関する提案に対して、どのように対応したらよいでしょうか。

A6.

株主総会当日における提案の中には、議場に諮らなければならないものがあります。

これらの株主による提案は、「動議」と呼ばれ、主に、株主総会の議事進行に関わる手続的動議と議案の内容に対する修正動議の2種類があります。

手続的動議の中には、議長の議事進行を促すにすぎないものもあり、必ずしも、議場に諮る必要はありません。ただし、議長の不信任動議や総会の延期・続行の動議などは、議事進行するための先決事項として直ちに採決を行わなければなりません。

また、取締役報酬の減額や会社が提案した候補者以外の者を取締役に選任することを求める動議など、議案の修正動議については、動議が適法である限り、原則として議場に諮らなければなりません。


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3 株主総会終了後にもトラブル。どうしたらよいのか?

●シーン3
B副社長は、株主総会が終了した報告がてらに、A社長のお見舞いに行きました。A社長とは、「テレビ会議システムで会場と病院を繋いでA社長が議長を務められればよかったね」などと談笑しました(Q7)。

その後、B副社長は、顧問弁護士にも相談しながら議事録を作成し、取締役改選の登記手続を行いました(Q8)。

しかしながら、株主総会が終了して2カ月後、株主総会の進行に納得していなかった株主Xが、株主総会の決議取消しを求めて訴訟提起した旨の連絡を受けました(Q9)。B副社長は、もう懲り懲りです。

Q7.

テレビ会議システムを利用して、議長が外部から株主総会に参加することはできるでしょうか。

A7.

議長は、株主総会にテレビ会議システムによって出席することも可能です。

テレビ会議システムによる出席を認めるのであれば、会社は、取締役会での招集決定の際に、テレビ会議システムによる出席方法や質問・動議の提出などの権利の制限について決定する必要があります。また、会社は、これらの事項について招集通知に記載するか、記載した書面を同封して、株主に対して通知する必要があります。

テレビ会議システムを利用する場合、株主総会の会場と接続先が、双方向にかつ速やかに情報を伝達できるようにしなければなりません。そのため、一般的に利用されているライブ配信サービスやウェブ会議ツールで、通信に問題がないかリハーサルや接続テストを実施することなどが必要になると考えられます。また、万が一、当日に通信障害が発生した場合に備えて、代わりのWi-Fiや電話会議システムを用意しておくとよいでしょう。

Q8.

もし、取締役の改選に関する登記手続の申請を忘れてしまった場合、どのような罰則があるのでしょうか。

A8.

会社法では、変更登記の申請手続を失念した場合の定めとして、100万円以下の過料に処せられる可能性があります。

取締役の氏名は登記事項であり、取締役の氏名に変更があった場合、株主総会終了後2週間以内に変更登記の申請手続を行う必要があります。手続を忘れてしまった場合には、速やかに申請手続を行うようにしましょう。

Q9.

株主総会の決議取消し請求とは、どのような手続でしょうか。

A9.

株主総会の決議の効力を争う裁判であって、弁護士に相談しつつ対応する必要があります。

株主総会の招集手続や決議方法に法令・定款がある場合、著しく不公正な場合において、株主が株主総会の決議の効力を争うものです。株主総会の決議取消しの訴えは、決議の日から3カ月以内に提起しなければならないものとされています。そのため、仮に株主総会の決議に瑕疵があったとしても、3カ月以内に訴訟が提起されていない場合には、効力を争うことはできなくなります。

また、仮に訴訟が提起された場合であっても、直ちに株主総会の決議が取り消されるわけではありません。具体的には、瑕疵が重大ではなく、決議に影響を及ぼさないものであるときには、決議の効力は維持されます。

もっとも、株主総会の決議に不備がないように、入念に株主総会の準備を行うことが大切です。

4 終わりに

この記事で例に挙げたようなトラブル続きの株主総会は、現実ではなかなか起こり得ないかもしれません。しかしながら、いざ、このような事態になったときに慌てることがないよう、今からしっかりと準備しておかなければなりません。

また、何かトラブルが発生したときなどにすぐに弁護士に相談できるようにしておくことも大切です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年5月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:日本情報マート 監修:三浦法律事務所 弁護士 磯田翔
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