近年、会社員や主婦などさまざまな人が起業にチャレンジしています。その背景には、準備資金のハードルが下がったり、支援制度が充実してきたりしていることの他、自分で道を切り開いていくというマインドが広がってきていることがあるでしょう。しかし、起業すること自体は簡単でも、企業を発展させていくことは簡単ではありません。経営を続けていく上で、乗り越えるべきさまざまな課題があり、中には起業の段階から押さえておいたほうがよいものもあります。

そこで、今回は、起業で失敗しないために事前に押さえておきたい大切な4つのポイントを、経験者でもある筆者がお伝えしたいと思います。

1 起業の目的(ビジョン設定)

当たり前のことですが、起業の目的を明確にすることは非常に重要です。起業当初は、誰しも「作りたい世界」や「ありたい姿」をイメージし、やる気に満ちあふれています。しかし、勢いが先行して、「作りたい世界は、誰のどのような問題を解決するのか?」などが詰め切れていないことがあります。何度も自問自答を繰り返してみることが大切です。

また、起業はしたもののビジネスが軌道に乗らずに気弱になり、「このビジネスはニーズがないのではなかろうか」と落ち込むことがあるかもしれません。つらいとき、迷ったときに立ち戻れるビジョンがあれば、自分とビジネスを信じて前に進むことができます。

2 起業の始め方

起業というと株式会社などの法人設立をイメージすると思いますが、売上の見込みが立たないうちは、個人事業主としてスモールスタートし、事業が軌道に乗ってから「法人成り」するほうがよいかもしれません。

株式会社の設立には定款の作成や役員の選出などの他、登記に必要な手続きが多くあります。加えて、司法書士などに依頼すると、15万~30万円程度の費用がかかります。起業当初から出資を受ける見込みがあったり、課税売上高が1000万円を超えたりして、消費税の負担軽減が期待できる場合は法人成りのメリットがあります(同様に、利益については所得税と法人税を比較します)。しかし、そうでない場合は個人事業主としてのスタートがよいでしょう。

また、起業初期は、収入が安定しないことも多いです。固定費をなるべく抑えることが重要なので、オフィスを借りたり、従業員を雇ったりするタイミングは慎重に検討するようにしましょう。

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3 集客のポイント

起業当初、限られたリソースで営業するためには、効率性を高める必要があります。見込み顧客と接点を持つための方法として検討したいのが、SNSマーケティングです。SNSマーケティングをうまく展開すれば、潜在的な顧客がどの媒体を利用しているのかなどを探ることができます。

SNSマーケティングで大切なのは、“共感を呼ぶ情報の発信”です。起業当初は、できるだけ多くのコアなファンを作ることが、ビジネスを成功に導くポイントです。そのため、大多数の人に必要となる情報ではなく、ターゲットとなる顧客層を絞り込み、ペルソナ設定を行い、そのペルソナに響く情報を発信し続けましょう。

筆者の場合、顧客層は20代後半~30代の女性が多いのですが、コアの顧客層は「30歳前後の独身女性で、キャリア形成とプライベートのバランスに迷っている人」と設定しています。こうすることで、顧客層の抱えている課題をリアルにイメージでき、より共感性の高い情報を発信することが可能となります。

4 チーム化

起業して少しずつ仕事量が増え始めたときにぶつかる壁が、1人でできることの限界です。人を雇うほどの経済的余裕がないときには、業務委託という形で、動画やHP制作、ライティング、経理などの一部の業務を切り出して委託します。

委託先に心当たりがない場合、クラウドワークス、シュフティ、ココナラなどのクラウドソーシングを利用すれば、特定のスキルを持つ人材が見つかるかもしれません。また、既に委託先に心当たりがある場合、任せたい業務をプロジェクトごとにチーム化して仕事を進める方法もあります。チャットワーク、Facebookのメッセンジャーなどを利用すれば、お互いどこにいても仕事の進捗管理ができ、タスクの振り分けなども可能となるため、プロジェクト単位で依頼する相手を決めてチームを作ることが可能です。

業務を委託する際のポイントは、シンプルな業務委託契約と守秘義務契約を締結し、業務の範囲や最低限守るべきポイントなどを明記しておくことです。ただし、この方法だと細かな部分で認識の相違が発生する恐れがあるので、委託先は慎重に選定する必要があります。

5 女性ならではの気を付けたいポイント

最後に、女性ならではのポイントについてお伝えします。女性は、結婚や出産などのライフイベントによって、生活のリズムやスタイルが大きな影響を受けます。そのため、起業の計画を立てる際に、5年先くらいまでの自身のライフプランも同時に考えておく必要があります。

例えば、妊娠・出産した場合、個人差はありますが、体調の変化やつわり、睡眠不足などで、それまでの30~50%程度の時間しか稼働できないことや、体力的に無理がきかないことなどは想定しておきましょう。パートナーがいる方は、ライフプランと起業プランを話し合い、1年後、3年後、5年後の理想の生活イメージを共有しておくことが大切です。

起業のタイミングと妊娠や出産が重なった筆者は、つわりの中で事業計画を立て、出産後すぐに保育園に娘を入園させ、毎日睡眠不足の時期を過ごしました。なかなか計画的にはいかないものの、事前に起こり得るライフイベントを想定して、起業の時期をずらすことが可能ならば、負担は少なく、むしろ楽しみながら取り組むことができます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年10月19日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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提供
執筆:HAPPY LIFE CAREER 代表 加藤晶子(かとうあきこ)
新卒で静岡銀行広報室配属となり、4年間社内外広報を経験。その後、リクルートキャリアにて人事の採用担当として入社。2年後、名古屋支社へ異動。中小企業向けの新規開拓から大手企業担当となり、MVPやMVG(グループ表彰)などの成果を上げる。
2011年、キャリアコンサルタントとして独立後は、若者の就職支援を中心に活動開始。就職支援セミナーに年間100回登壇、個別相談件数は3000件を超える。現在は、「才能を活かした自分らしい働き方」を見つけるためのコンサルティングを行う。Webメディアのライターや大手企業のキャリア研修講師など、幅広い分野で活躍中。家族は夫と4歳の娘。

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