年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、野澤 比日樹さん(株式会社ZENKIGEN 代表取締役)です。

新型コロナウイルス感染症の影響下、大きく社会構造が変化しようとしている中で、人材採用における【面接】のあり方も今年の3月初旬以降劇的に変化が始まっています。合同説明会等の採用イベントや、一次、二次、最終面接などを対面では行えない状況となり、大企業のみならず、中小企業のWEB面接は必須に。仮に来社を要求した場合には、SNSなどで酷評を拡散されてしまうリスクもあります。今回は、WEB面接の現状、採用プロセスをオンライン化するための短期立ち上げ方法、WEB面接の成功するための秘訣、近未来の採用のあり方までお話しを伺いました。

ZENKIGEN社、野澤さんについては、以前に雑誌WedgeのWeb版(WEDGE Infinity2018年9月25日配信)にて、記事(記事タイトル:「部長が変われば会社が変わる!」採用に革命起こすオトナベンチャー)にしています。まずはそちらをご覧いただけますと野澤さんのご経歴や起業への想いをご覧いただけます。
当該記事はこちらです。

(インタビューもオンラインで)

1 ZENKIGEN社について

1)オモシロイ社名の由来

全機現→ZENKIGENを社名にしている野澤さん。全機現とは人が持つ能力の全てを発揮することを示す禅の言葉から引用しています。多くの大人が全機現する社会は幸せな社会であり、次世代にそんな社会を引き渡したい、それが社名に込めた想いであり、必ず実現していくという意志表明です。
翻って、現状、全機現している大人が少ないことが引き起こしている社会の問題、それも人材の登用、採用のあり方、人事のあり方、会社組織の課題を解消していくことが目下の野澤さんの主戦場です。

2)ありそうでなかったサービス、それはエントリー動画という発想

【スカイプ面接】と言えば、少し前まで一般化していた言葉。これは、海外人材や地方人材など、遠距離での採用面接を行う際に活用されてきました。これを言い換えると【ライブ面接】でした。野澤さんが斬新だったのは【エントリー動画】を採用面接に導入したこと。まさにありそうでなかったオンライン採用サービスがHARUTAKA(ハルタカ)です。
サービスについては、こちらの動画をご覧ください。

・企業側のエントリー動画のメリット

◆時間の制約がなくなる→ライブ面接だと面接官と応募者の時間調整がまず必要となる。エントリー動画だと採用側がいつでも好きな時間に動画を見て選考が可能になる。
◆採用力の平準化、複眼力で採用力がアップ→ありがちな体育会系出身者による、同じ競技出身者の偏った採用傾向はよく聞く話。同様に面接官の偏りにより、なかなか採用側の平準化は難しい。エントリー動画であれば、複数の眼で採用検討できることから面接力アップ、採用力アップにも繋がる。
◆エントリー動画のデータが二次、三次選考に活用できる→エントリー動画で一次選考を受けた場合、その動画で二次、三次選考の面接官が、どういった候補者なのかを確認でき、引き継ぎがスムーズになる。採用選考における効率化、時間短縮にも大いに役立っているそうです。

・学生側のエントリー動画のメリット

◆何度でも撮り直しができる→SNS投稿で、自撮りに慣れている経験値はあるものの、ライブ面接や、リアルの場面ではなかなか緊張しすぎてうまくいかなかった人も多いと思います。動画を何度も撮り直しができることで、自分自身で納得した面接に臨むことが可能になりました。
◆印象が伝わりやすい→リクルートスーツ、統一されたような髪型が昨今問題になってきていますが、エントリー動画で自分の部屋で自由な服装、自由な発言で個性を伝えやすいこともメリットに。
◆外国人の日本語力の見極めに→留学生の大きな壁であった日本語能力の判断。履歴書や検定等の文字だけの成績では実際の会話力、日本語におけるコミュニケーションは今までリアル面談まで判りませんでした。事前に録画された動画を見るだけでこの問題は解消できます。学生側の無駄足や検定結果だけでは伝わらない語学力がエントリー動画を見ただけで判断材料に。

HARUTAKAを導入し、採用力を高めている企業の情報も参考になると思います。以下をご覧ください。

https://harutaka.jp/case

エントリー動画を採用の世界に持ち込んだ野澤さん、デジタル化への大きな一歩だったと思います。
また、エントリー動画には、事前質問を投げかけられる設問の登録機能や、ライブ面接ではチャット文化が当たり前の学生に対応するためのチャット機能がある。この他、応募者管理や採用分析機能をシステムに搭載しています。
まさに採用革命ツールだと思います。

3)採用力が高い企業ほど候補者の【面接体験】を重視、【面接官=会社(会社の顔)】である認識を忘れずに。

こちらのサイトはご存知でしょうか。

Google社で働きたい人はたくさんいるはず。しかし同社は手を抜いていない。単なる採用面接で終わるのでなく『有意義な応募者体験を提供する』と謳っています。

企業において大切なこと、しかし見過ごされているのが、【面接官=会社】ということです。

  • 面接で『この会社には入社したくない』と思った→85%
  • 面接官の不快な態度・言動で入社をやめた→74%
  • 選考中の悪い体験を他人に伝えた→72%

上記は、【マズイ面接官、ファンをつくる面接官】から引用しています。こちら相当に面白いです。採用側の感度を養うためにもおススメです。

https://partners.en-japan.com/special/180326/

採用担当者からすると、目標の応募人数や面接の枠を埋めることを達成することが【仕事】。それはある意味正しいですが、その採用活動に内在している見えないリスクがあることを経営側は常に認識しておくことが大切です。

◆内定辞退者や不合格者から広がる悪い評判はSNSなどで拡散されやすく、特に企業にダメージを与える評判は早くて強烈化しやすい。
◆今後接していく潜在層への採用ブランディングはとても重要。面接の質は採用の要!

・冒頭のGoogle社のサイトの中で、面接担当者用トレーニング チェックリストが良いものですのでご参考まで。

https://rework.withgoogle.com/jp/guides/hiring-train-your-interviewers/steps/interviewer-training-checklist/

・面接の構造化や面接官のトレーニングを実施し、CXを高めるメルカリの採用プロセスも価値あるものです。こちらも。

https://seleck.cc/1335/

2 新型コロナウイルス感染症下、企業側の変化、野澤さんの動き~変化を先取りするためのWEB面接:コツ&5か条について~

1)動きの変化は2020年2月から

ここ最近のトピックスは?とお聞きしますと野澤さんからは『自社資金調達完了とコロナによる採用の変化』と返事がありました。3月18日に発表の資金調達に関してはこちらをご覧ください。
昨年12月に過去最高の受注件数となったZENKIGEN社、通常企業の採用予算、採用スケジュールの観点から毎年年末が売上のピークとなるそうですが、今年は2月中旬から様相が変化し、営業日数も少ない中、12月を超える売上になり、3月も前年同月対比5倍程度の伸びになっているそうです。
変化があったことは、受注件数の伸展だけではなく、今までにない顧客側の【姿勢】の変化というべき事象が起こっているそうです。

  • コロナ発生前→複数のWEB面接サービスとのコンペ、社内プレゼン、その後の検討、検討のステップ。導入の長期化。
  • コロナ発生後→検討終わって、稟議も完了しています。いつから利用できますか?

まさに潮目が変わったと、野澤さんは話します。

2)オンライン活用による採用変革、その短期立ち上げの支援を実行した野澤さん

この潮目が変わったことの、波に乗れるようにと、いちはやくホワイトペーパーの作成を実行し、2月21日にリリースをしています。【採用プロセスにおけるオンライン活用のポイントと、短期立ち上げ支援のご案内】として公開しました。

採用プロセスにおけるオンライン活用の画像です

自社サービスのみならず、連携できる他社のサービスや、同業他社の名前も挙げ、分かりやすくオンライン化への手順を公開しています。業界発展への心意気を感じます。この手順を活用して、サービス(HARUTAKA)導入を3日で、採用プロセスのオンライン化を2週間で実行できる支援を行っています。その詳細(ホワイトペーパー)についてはこちらをダウンロードしてください。

このホワイトペーパーは、3週間で1000回のダウンロード数を超えるほどの反響があったそうです。

支援事項を説明した画像です

ホワイトぺーパーのみならず、新型コロナウイルス感染症緊急対応によるお悩み相談をライブで配信する【「ZENKIGEN」×日本初のCHRO養成講座「CANTERA」による「コロナ危機における人事課題の相談所」】を開催するということで、これもオンラインで開催するという徹底ぶり。こちらで課題感満載の企業人事の皆さんへお役立ち提供をしています。詳細はこちら

3)変化を先取りするためのWEB面接:コツ&5か条について

今後、コロナ情勢が沈静化しても、採用におけるオンライン化の流れは後戻りしないと話す野澤さん。この変化を先取りして早期に採用プロセスを変革していこうとする企業人事セクションの皆さん向けに、【成功するためのコツ】と、先行して【WEB面接をうまく利用している企業様の5か条】という観点でまとめていただきました。

◆【成功するためのコツ】

■話しやすい場作り

いきなり役員面接などは、上層部の方々と面接をするときは緊張しやすくなるため、例えば面接開始前に、人事の方に雑談などをしてもらい、緊張をほぐしてあげる。
また、面接官が普段行うアイスブレイクもオフライン時より長めに行う。

■身振り手振りや表情

候補者のお話に対する反応はオフライン時より伝えにくくなるため、身振り手振りをあえて大きめに取り、意思疎通を図る。
また、表情をよりクリアに見せるため、部屋を明るくする。

■会話のテンポ

通信の関係で、相手が話していることに被ってしまうことがあるため、表情で「はい」や「うん」などを表現し、一呼吸を置いた後にゆっくりと話してあげる。

■リカバリープラン

障害や通信環境により、面接がうまくいかなくなることもある。
例えば他のツールを急遽案内するなど、トラブルが起きた際のマニュアルを用意しておく。

◆【WEB面接をうまく利用している企業様の5か条】

1. 課題認識をするべし

何が課題で、何を解決するためにオンラインで面接を行いたいかを把握しておく必要がある。
例えば、面接のリードタイムが長いや、移動費などのコストがかかるなど。

2. ゴール設定をするべし

何を成し遂げたいのかを明確に設定しておく。
三ヶ月後、一年後にどういう姿になっていたいか、使用状況がどうなっているかを描いておく。
例えば、リードタイムをどれくらい短縮したいか、採用工数や移動費をどれくらい削減したいか、地方候補者の受検率をどれくらい上げたいか、など。

3. 制約条件を把握するべし

人員や予算、スケジュールなど、社内と社外のリソースがどれくらいあり、どこまで実現可能かを把握する。
例えば、エントリー動画の動画を見ることができる人は何人いるのか。
採用の告知に予算をいくら使えるかなど。

4. ソリューションのマッチ度を確認するべし

解決したい課題が、HARUTAKAや他オンラインサービスの提供価値と合致しているか。
例えば、元々1日のリードタイムを短縮したいという目的に対し、WEB面接を導入しても、リードタイムが短縮することはない。

5. 人事が推進力を持って実行するべし(※一番重要)

社内では、「経験不足だから」や、「直接会いたいから」などのバイアスで、WEB面接に対して反対をする人が出てくるケースが多い。
人事が積極的に、WEB面接のやり方や、候補者のどこに注目するべきかなどの説明や案内をしてあげる必要がある。

上記を利用して是非変化を先取りしていただきたいと思いました。

4)テレワーク助成金まとめ

オンライン採用などテレワークを導入するに当たっては、PCなどの機器購入やクラウドシステムの導入費用がかかりますが、次のような助成金制度があります。ご参考になれば幸いです。
条件や申請手順など内容詳細は、各機関へお問い合わせください。

・働き方改革推進支援助成金 (テレワークコース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/telework_10026.html

・働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

・IT導入補助金
https://www.it-hojo.jp/first-one/

3 近未来の採用のあり方

1)近未来の採用のあり方

オンライン採用面接が当たり前化したその先の実現されるであろう近未来の採用のあり方、その実現されるであろう環境にフィットしたサービスの準備も着々と野澤さんは取り組んでいます。
東大での研究、知見を活かしたAI搭載の面接サポートツール【ZIGAN】です。漢字で表すと、【慈眼】、慈眼とは禅の言葉で『慈しみの眼を持って人を見れば、海のように幸せが溢れる』という意味だそうです。

ZIGANの概要ですが、応募者がHARUTAKAを通じてライブ面接を行う際に、面接官の画面では、応募者の動画データを中心に、【信頼・尊敬】の計測をAIエンジン(ZIGAN)が行った結果が映し出され、面接官のサポートを行う。人に寄り添うAI、分析システムです。
この分析結果を用いることで、面接官のトレーニングを実施でき、候補者との信頼関係構築が行えることで、採用不合格であったとしても、会社ブランディングが棄損しない、面接官=会社の考え方、あり方を実現していきます。

2)野澤さんからメッセージ

 WEB面接という選択肢を考えたことがなかったという会社も多いと思いますが、コロナによってやらざるを得ない時代になりました。実際、3月に入り即導入したいという問い合わせが殺到し、一日のライブ面接の利用数がそれまでの20倍以上になるほど急激にWEB面接の利用が進んでいます。それまで、数年以内にWEB面接の利用が当たり前の時代がやってくることは想定しておりましたが、2~3年前倒しでその時代になったように思います。
このような状況だからこそ我々が社会にお役に立てる時だと社員が一丸となって我々の役割と責任を果たそうとしております。
企業の人事の方は、この機会をチャンスと捉え採用活動自体をアップデートすると決めて、まずは無料ツールからでも「やってみる」ことが採用の競争力をあげることに繋がると思います。そして採用をアップデートすると決めたら何より重要なことは、経営陣や関係する人をやる気にさせ巻き込めるか?という人事担当の方の推進力です。
多くの企業がこの機会に採用をアップデートすることで、候補者・人事担当者双方の感染による心理的不安の解消・移動による交通費等の負担を減らし快適な採用・就職活動ができるようになることを願っております。

とメッセージを寄せていただいた野澤さん。まさにこれからが本番、来たるべき新しい採用面接のあるべき姿を具現化されていくと感じます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月11日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

提供
執筆:杉浦佳浩 (すぎうら・よしひろ) 代表世話人株式会社代表
三洋証券株式会社入社(昭和62年)。鹿児島支店にて勤務。地元中小企業、個人富裕層の開拓を実施。 日経平均最高値の2カ月前に退職。次に日本一給与が高いと噂の某電機メーカーに転職。埼玉県浦和(当時)にて、大手自動車メーカー、菓子メーカー、 部品メーカー等の主力工場を担当。 退職時は、職場全員から胴上げ。そして、某保険会社に二十数年勤務後、平成26年末に退社。在社中は、営業職、マネジメント職を経験して、リテール営業推進、若手人財育成を中心に担当していた。 社外の活動も活発に行っていた。平成27年1月1日、代表世話人株式会社を設立。
同社代表取締役に就任。世話人業をスタート。年間1000人以上の経営者と出会い、縁をつなげている。

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