グリーントランスフォーメーション(GX)を分かりやすく解説します

はじめまして、皆さん! レジル総合研究所の北川と申します。最近、カーボンニュートラルやグリーントランスフォーメーション(GX)という言葉を聞くことが増えましたが、皆さんはどれくらい関心がありますか?

まさに今、地球規模で極端な気象や生態系の変化などが顕在化してきており、私たちの日常にも様々な影響を与えています。急激な気候変動は、石油などの化石燃料の利用や森林伐採による温室効果ガスの増加が主な原因とされています。

世界では、気候変動への対策が本格的に始まっており、日本でも「2050年のカーボンニュートラル実現」を目標に、様々な取り組みが進められています。

この連載では、経営者の皆さまに向けて、これからのビジネスに必須となるカーボンニュートラルとGXの基本を分かりやすく解説しつつ、具体的なビジネスへの応用方法もお伝えしていきます。気候変動に対する地球規模の視点から、日本のビジネスにおける政策や関係者の動向までを掘り下げていきますので、皆さんが持続可能な未来を築く一助となれば幸いです。

それでは、一緒に学んでいきましょう。

(図表1)【GX(グリーントランスフォーメーション)の全体像】

GX(グリーントランスフォーメーション)の全体像

(出所:筆者作成)

気候変動とは?

早速ですが、「そもそも気候変動とは何なのか?」といったあたりからひもといていきたいと思います。

気候変動とは、地球の気候が長い時間をかけて変わる現象のことです。

この変化には、

  • 太陽周期の変動や火山の噴火など自然の要因
  • 化石燃料の燃焼や森林伐採など人間活動の要因

があります。特に産業革命以降、化石燃料の燃焼等による温室効果ガスの排出が急激に増えており、それが地球の気温上昇の主な原因とされています。

温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)を中心に、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などがあります。では、なぜ温室効果ガスが増えると、地球の気温が上昇するのでしょうか。これらのガスは、図のように、地球を包み込み、太陽の熱を地球から逃げにくくする働きがあります。産業革命以前に約278ppmだった大気中二酸化炭素は、2022年には417.9ppmまで上昇しており、地球は熱を逃がしにくくなり、気温が上昇する要因となっています。

(図表2)【温暖化の原因】

温暖化の原因

(出所:日本情報マート作成)

気温上昇の実態は?

ところで、地球の気温はどのくらい上昇していると思いますか。

産業革命(1800年代後半)以降、地球の平均気温は約1℃上昇しています。

「たったの1℃」と感じられるかもしれませんが、最終氷期と言われる約2万1000年前の平均気温はいまよりも6℃低いだけでした。地球の平均気温は、氷期の終わりに約1万年をかけて6℃変化しており、150年程度で1℃という変化がいか急激であるかよく分かると思います。

以下のグラフは、「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」(注)の第6次評価報告書に掲載された地球の平均気温の推移を示しています。平均気温は過去2000年において横ばいまたは若干下降していましたが、直近の150年間で急激な上昇が見られます。右側のグラフは、気温上昇に寄与する要因を示しており、茶色の部分が人間と自然の両方の要因、緑色が自然のみの要因を表しています。

(注)IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織。各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的に活動を実施。

(図表3)【地球の平均気温の推移】

地球の平均気温の推移

(出所:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)「第6次評価報告書」)

気候変動の影響

気候変動に伴う気温上昇は、極端な気象事象や海面上昇、生態系の変化を引き起こし、私たちの生活にも影響を及ぼします。既に地球規模で異常気象の頻度や強度が増加しており、世界気象機関(WMO)の調査によると、1970年から2019年までの50年間で、暴風雨や洪水、干ばつといった気象災害の発生件数が5倍近く増加していると報告されています。

(図表4)【世界における1970年から2019年までの気象災害発生件数】

世界における1970年から2019年までの気象災害発生件数

(出所:WMO Atlas of Mortality and Economic Loss from Weather, Climate and Water Extremes (1970–2019))

2022年にパキスタンで発生した歴史的な大洪水に関するニュースを記憶されている方もおられるかもしれません。この大洪水では、国土の3分の1が水没し、3300万人が被災しました。洪水や山火事、干ばつなどの気候変動の影響が、ますます身近なものとなっています。

パキスタンで発生した大洪水

このように、人間活動による温室効果ガスの排出は、気候変動の原因となり、私たちの日常生活や未来に大きな影響を及ぼしています。また、温室効果ガスの排出量削減を1つの国だけが取り組むのには限界があり、地球全体での協力が不可欠です。

次回以降は、気候変動対策の基盤となる国連を中心とした国際的な枠組みに焦点を当て、温室効果ガスの削減に向けた取り組みについて詳しく探っていきます。

以上

画像:Mariko Mitsuda

Rashid-shutterstock

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レジル総合研究所(レジル株式会社
レジルは、多角的なエネルギー事業の基盤とノウハウ、分散型電源設備のAI制御などのテクノロジーに強みを持つクライメートテックカンパニー。「脱炭素を、難問にしない」をミッションに、脱炭素社会実現のための様々なソリューションを提供している。2023年12月に、脱炭素分野のシンクタンク・コンサルティング・インキュベーション機能を担う「レジル総合研究所」を開設。所長にはレジルのエネルギー全般を管掌する北川竜太が就任。大学・企業との共同研究の推進、自治体・企業への脱炭素支援、政策や市場の調査研究・提言活動などを行う。

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